がん検診による早期発見・早期治療の大切さを知り、自分の体を守る。

がん検診の概要と、受診のメリット


日本における年間死者数が30万人を超え、死亡原因の約3割を占めると同時に、20年以上もの間死亡原因第1位「がん」

日本では男性の2人に1人、女性の3人に1人がなると推定される「がん」。


遺伝子(DNA)の突然変異によるがん細胞の発生と、増殖によって進行するこの「がん」は、その遺伝子変異のメカニズムはいまだに解明の途上であり、完全に予防する方法も確立されていないことは、皆さんもよくご存知のとおりです。

しかし、この人類の最大の難敵である病については日々研究が進んでおり、いくつかの有効な対処方法も明らかになってきています。


その最も有効な対策のひとつが「がんの早期発見」であり、がん検診最大の目的は、まさにこの「早期発見にもとづく早期治療」にあるのです。


がん検診は多くの自治体において、比較的少額の自己負担、ないしは無料で受診することができます。

また、サラリーマンの方が職場検診として受ける場合には、事業所や加入健保組合による一部または全部の助成・費用補助が設けられている場合がありますので、受診を申し込む前に、会社の担当部署にたずねてみるとよいでしょう。

2007年に国が実施した「がん対策に関する世論調査」によると、受診全体の約半数が「職場で実施するがん検診の受診」です。



内閣府が2009年10月に発表した、成人男女約3,000人を対象としたがん対策に関する世論調査によると、「がん検診が重要」と回答した人は97.4%に達し、がん検診に対する一般的関心の高さがうかがわれました。

しかるに、「過去2年間に実際にがん検診を受診したことがある」回答者の割合は全体の32~42%程度と、がん検診に高い関心を示しながらも実際の受診率がそれほど高くないこともまた、明らかになっています。


がん検診の受診率について全国民的なデータはいまだ無いのですが、国民健康保険加入者の中で、がん検診を適切な頻度で受けているのは全体の2割に満たないという推測もあります。



がん検診 子宮がん検診 大腸がん検診 乳がん検診 胃がん検診 肺がん検診 一般にがん検診は40歳以上から、年に一度の受診となっています(ただし子宮頸がん〔しきゅうけいがん〕検診においては20歳以上から、検診間隔は2年に一回。また乳がん検診の検診間隔も、2年に一回となっています)。


さらには毎年の定期的受診により検査結果の推移・変化をみることが望ましい、とされています。


これを逆から考えると、ある年だけ一回受診してみて、特段の問題がなかったからといって翌年以降の受診をしないような場合には、検診の効果はほとんど無い、ということになります。

なお、思い当たる点や自覚症状がある場合には、次の検診を待つことなく、自分から医療機関の診察を積極的に受けるのが望ましいことは、言うまでもありません。


がん検診に最も期待される効果として「自覚症状のない段階で早期発見されることで、がんが治る可能性が大きく高まること」、そして「早期治療により、患者の肉体的・精神的・経済的な治療負担も軽減されること」があります。


がん検診はもともと自覚症状のない健康な人が受けることから、実際に早期がんが発見されるケースが多くあります。


また、がん検診において、大腸がんにおけるポリーブのようないわゆる「前がん病変」が見つかるケースも多く、それらを早期に治療することによって、がんへの進行を防ぎ減らすことができるという効果もあります。


がん検診、知っておきたいいくつかのこと


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がん検診の受診に際していくつか知っておくべきこともあります。


まず第一に、「がん検診を受けさえすれば、100%がんを見つけられるわけではない」ということです。


がんが見つけにくい位置に出来ていたり、あるいは発生してから間もないためがん検診の段階で見落とされるという可能性は、実際に起きていることでもあり、残念ながらあり得ることです。


実はがんと一口に言っても、放置すると進行して死に至るといった進行性のものばかりではなく、生命には影響のない、進行がんにならないタイプの小さな「がん」も存在しています。

(そもそも健康な人の体においても、一日に約5,000個ものがん細胞が発生しては消えていっていることが、最近の研究で明らかになっているそうです。)


このようながんと悪性のがんとの区別をつける方法は、現状では無いとされており、がん検診で発見された場合は大事を考えて、早期手術に踏み切らざるを得ないケースもあるようです。


そうなると、やむを得ないことではありますが、患者にとっては心理的にも経済的にも大きな負担がかかってくることになります。

そのような意味では、すべてのケースにおいて「早期発見による早期治療」がよいことだ、といいきれない面があることもまた事実です。


また、がん検診の内容・方法については国際的にも統一されているわけではなく、「がんに効果がある」という有効性についての評価が国際的にもほぼ定まっている検診方法と、そうでないものがあることは、知識として知っておきましょう。



一般に「がんに効果がある」というためには、何を指標として評価するのがよいのかという点が、難しい問題とされています。


現在のところ、がん検診による「がんの発見率の大小」ではなく、「対象となるがんが、がん検診による発見であって、その死亡率が、がん検診によって減少する効果があるかどうか」を科学的に検証していくことが、指標として重視されています。


そのような検証を通じて効果が認められた、いわばがん検診の有効性について科学的根拠をもつ方法には、胃がん検診における「胃のエックス線検査」、大腸がん検診における「便潜血反応検査」、子宮がんにおける「細胞診」、乳がん検診における「視触診」と「マンモグラフィー」の併用、肺がんにおける「胸部エックス線検査」と「喀痰細胞診」の併用、肝臓がんにおける「肝炎ウィルス・キャリア検査」などがあります。


現在、市町村で実施されているがん検診においては、これらの検診方法も採用される一方で、科学的効果があるとまで判定されてはいない、精度の低い検診方法も採用されている事例もありますので、受診にあたっては注意が必要です。


がん検診の有効性がしばしば議論に上りますが、そもそも「がん検診」は、すでにがんという病気にかかっている人を対象にした「治療」ではありません。

基本的に「健康」と想定される母集団を対象に、「もしかしたらがんかもしれない」という可能性のある人を、できるだけ全国均一的な基準で選び出すための選別プロセスであることを、理解しておく必要があります。


がんは進行性のため、早期発見で対処する必要がある病気です。


がん検診の有効性は、「がんによる死亡率を検診でどれだけ引き下げられるか」が問われるものですが、たとえ検診で発見されても精密検査を受けない人もいれば、検診を受けて判明したときにはすでに末期で治療が難しいケースもあります。

それらもすべて考慮に入れ、がん検診だけの有効性を正しく導き出すのは、大変に困難なのです。


また、検診で潜在がん患者の抽出率を高めようとすればするほど、精密検査の対象者も増え、病院での検査等を含めた社会的な医療コストも跳ね上がることになります。

その点でも「国や自治体としての費用負担はここまで」と、どこかで線を引く必要性がでてきます。



結局のところ、「がん検診」の有効性についてはどう考えたらよいのか?と、疑問に思われるかもしれません。


遺伝子(DNA)の突然変異による「がん」という病気は、個々のケースにより症状が異なりひとつとして同じ症例はないとされます。

千変万化に異なる症例を総称して「がん」と呼ぶ以上、むしろ「がん検診」ですべてを発見できると考えることのほうに無理があります。


しかし上に述べたとおり、「がん検診」のなかには、有効性においてすでに国際的検証を受けているものがあることも、また確かです。


検診を受ける側としては、「がん検診は効果が認められる場合と、そうでない場合が存在する。決して万能ではない。」ということを、あらかじめ理解しておく必要があります。


がん検診への姿勢と検診内容は、市町村により異なる


国は、「がん対策基本法」「がん対策推進基本計画」にもとづき、がん検診の受診率を50%まで引き上げたいとしていますが、がん検診の受診率は現状10~20%強(厚生労働省の2005年調査による)程度と、全国的に低迷しているのが現状です。


もともとのがん検診受診率が高くないことに加え、2008年4月から開始した特定検診への対応に市町村が追われていることもあり(特定検診については姉妹サイト 特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解 をご参照ください)、がん検診対策へそれほど予算を割けない市町村が、全国的に相当数あることも一因のようです。


市町村としても、がん検診の受診者が増えるほど費用がかさむことから、受診者数に上限を設ける自治体もすでにでてきています。


このように、「がん検診の内容・実施回数・負担費用などは、市町村ごとによって異なる」ものであることを知っておきましょう。


そのうえで、お住まいの市町村におけるがん検診の実施状況と、検診内容がどのようになっているのかについて、あらかじめ市町村担当窓口に確認しておくのがよいでしょう。




がん検診の結果、精密検査が必要とされたら


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がん検診の結果「要精密検査」「陽性」と判定された場合、がんの疑いがあるということになります。


したがって、次にとるべき行動は、一刻も早く医療機関で「精密検査」を受けることです。


精密検査においては、がんの部位別に、異常の程度や状況に応じて、CT検査画像検査、そして生態組織を採取して調べる「生検」などを組みあわせた、より詳細な方法による検査が行われることになります。


なお精密検査を行った結果、「異常なし」または「良性の病変」という場合も、当然にあります(現実にはむしろ、そのほうが多いと言われています)。

専門的には、検診結果の「偽陽性」といわれるもので、精密検査を行ってはじめてわかることでもありやむを得ない面があります。


精密検査ともなると追加の費用もかかってきますし、心理的にも長い時間苦しい状態に置かれることになりますが、いったん精密検査の必要があるとされた場合には、ためらわずに受診することこそが絶対に必要なのです。


精密検査の過程で偶然、がん以外の別の重大な病気が発見されることもあり得ますし、結果のいかんによって精密検査の必要性と有効性が損なわれることはないのです。


精密検査で「がん」と判定された場合は治療に移行し、問題無しのときは次回以降、継続的にがん健診を受診する流れになります。


主ながん検診について知っておく


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主ながん検診としては、「胃がん検診」「大腸がん検診」「子宮がん検診」「乳がん検診」「肺がん検診」の五つがあります。

がんの種類によって、行われる検査の内容も異なってくることになります。

なお2007年に国が実施した「がん対策に関する世論調査」によれば、部位別で一番受診率が高かったのが肺がんで、その後は子宮がん、胃がん、乳がん、大腸がんの順番となっています。



「胃がん検診」は、一般的には「胃のエックス線検査」によって行われます。

バリウムを飲んで透視台に乗り、様々な角度から撮影することで、病変部があった場合はその部分が黒っぽい影として現れます。

精密検査
となった場合は、「内視鏡検査」や「生検」などを行うことになります。



「大腸がん検診」は、「便潜血反応検査」により、便中に肉眼でみえない微量の血液が混ざっていないか調べる方法が中心になります。

大腸がんは、腸粘膜の表面に出血することが多いからです。

便潜血検査による大腸がん検診を毎年受けている場合、受けていない人と比べ大腸がんで亡くなる危険性は、40%以下に減少するといわれています。

精密検査となった場合は、「内視鏡検査」や「生検」などを行います。



「子宮がん検診」は、子宮頸部の細胞を採集して調べる「頸部細胞診」が行われます。

また対象者を絞り込み、子宮体部から細胞をとる「体がん検診」があります。

子宮がんは発生部、すなわち子宮の入口手前にできる「子宮頸がん」と、子宮の奥にできる「子宮体がん」があります。

日本人には「子宮頸がん」が多いといわれています。

精密検査となった場合は、細胞を採取して調べる「組織診」などを行います。



「乳がん検診」は、医師による視触診、そして乳房エックス線検査である「マンモグラフィー」が中心になります。

乳がんは女性の30人に1人以上がかかる病気といわれ、40~50歳世代における女性のがん死亡原因の第1位となっています。

視触診
では、乳房のかたちの異変のチェック、またしこりの有無やリンパ腺の腫れの有無を調べます。


「マンモグラフィー」では、触診では見つけられないしこりになる前の乳がんを早期段階で発見することが可能で、国際的にも推奨されている方法です。

精密検査の場合は「超音波(エコー)検査」や、細い針をしこり部分に刺し細胞を摂取して調べる「穿刺吸引細胞診」などを行います。



現在、日本で最も死亡が多いのが、「肺がん」です。

「肺がん検診」では、「胸部エックス線検査」と「喀痰細胞診」があります。

特に、タバコが原因の肺がんは男性で70%、女性で15%に達するとされます。

肺がんは、肺の奥にできる「末梢型」と入口付近にできる「中心型」が多いのですが、喫煙と関係が深いのは「中心型」のがんです。

「末梢型」「胸部エックス線検査」「中心型」「喀痰細胞診」で発見されやすく、肺がん検診では両方の検査が行われます。

精密検査となった場合は、「CT検査」や「生検」などが行われます。





参考サイト


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