IP電話の相互接続に関して

最近はインターネットが普及し、色々なISPでIP電話サービスが利用できるようになりました。またIP電話と固定電話・携帯電話間との相互接続も行われるようになり、IP電話が普通に使えるようになってきました。しかし、IP電話間での相互接続はというと、通話可能なところと不可能なところがあったり、通話可能でも有料であったり無料であったりと、非常にややこしくなっています。そのため、IP電話間の相互接続について、接続の有無、有料・無料の区分についての情報をまとめました。


IP電話とインターネット電話の違い

いずれもVoIP技術を利用した電話のことで同じ意味で使っているところも多いですが、それぞれの意味を使い分けているところもあります。使い分けているところでは、おおむね次のような意味で使っているようです。
● IP電話
バックボーンに専用のネットワークを使用した電話。そのためISPが対応している必要があるが、一般の電話機が使用可能。
● インターネット電話
インターネットと共通のバックボーンを利用した電話。そのためISPが対応していなくても通話可能だが、特殊な電話機が必要。
このページでは上記の狭義な意味でのIP電話を対象とした相互接続について調べています。

VoIP基盤別のIP電話相互接続先

ADSL・FTTHなどのブロードバンドが普及してきている今日、色々なISPでIP電話サービスが導入されております。しかしそれらのISP全てが自社でIP電話設備(VoIP基盤)を所有している訳ではなく、他社のVoIP基盤を利用しているだけのISPも多々あります。IP電話に他社のVoIP基盤を利用している主な大手ISPを表1に記します。

表1. 主な大手ISPのIP電話サービスとそのVoIP基盤

ISPVoIP基盤
NTT-ComぷららKDDIフュージョンNTT-ME
BIGLOBEBIGLOBEフォン(NC)BIGLOBEフォン(PN) BIGLOBEフォン(KD)BIGLOBEフォン(FC)
@nifty@niftyフォン-C@niftyフォン-F @niftyフォン-K
So-netSo-netフォン
hi-hohi-hoでんわ-Chi-hoでんわ-F
AOLAOLフォン for フレッツ
ASAHIネットIP電話C IP電話F

IP電話の相互接続先は、基本的にはISPでなく利用しているVoIP基盤によって決まります(一部異なるISPもあるかもしれません。詳細については各ISPにご確認ください)。そのため複数のVoIP基盤を利用したISPであれば、ISP内であっても通話できない場合があることも、IP電話間の相互接続をよりわかりにくくしております。IP電話の相互接続先の情報を、VoIP基盤別にまとめたものを表2に記します。

表2. VoIP基盤ごとのIP電話間相互接続先

VoIP基盤通信事業者配布番号*1配布数 12 3456 789 101112 13141516 1718 192021
KDDI連合/NCC
1 KDDI
提携ISP
KDDI3000〜32512,520,000 \8.4× ×× \8.4\8.4\8.4 ×× ×× ×× ×
KNN5200〜5209100,000
シーテック600010,000
CATV富山252510,000
2日本テレコム 2000〜2034350,000 \8.4×× \8.4× \8.4\8.4\8.4 ×××\8.4 ×× ×
KDDI連合/電力系
3 フュージョン
提携ISP
フュージョン5500〜5532330,000 \8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4 ×××× ×× ×
NTT-PC8864〜886850,000
4 フュージョン
旧パワードコム
提携ISP
DTI8000〜8009100,000 \7.9\7.9\7.9 ×× ×× ×× ×
イッツコム2200〜220230,000
JapanCableNet808010,000
5ケイ・オプティコム 7100〜7113140,000 × ×\7.8\7.8 ×××× ×× ×
6CTC 7770〜777560,000 ×× ×\8.4\8.4 ×××× ×× ×
7QTNet 6619〜662020,000 ×\7.9 ×\7.9\7.9 ×××× ×× ×
8STNet 880120,000 ××× ×××× ×× ×
9TOHKnet 778810,000 ×× ×\7.9\7.9 ×××× ×× ×
NTT系
10 NTT-com
提携ISP
NTT-com3300〜37174,180,000 \8.4\8.4 \8.4\8.4×× ××× \8.4\8.4 ×× ×× ×× ×
関西マルチメディア3900〜390120,000
長野県協同電算868610,000
11 ぷらら
提携ISP
ぷらら7500〜7578790,000 \8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4\8.4 \8.4×\8.4 \8.4 ×× ×\8.4 ×× ×
アイテック阪神5000〜500560,000
フリービット7300〜730340,000
12 NTT-ME
提携ISP
NTT-ME5540〜5569300,000 \8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4\8.4 \8.4×\8.4 \8.4 ×× ×\8.4 ×× ×
NTTネオメイト2400〜240890,000
その他
13ソフトバンクBB 1000〜18128,130,000 ×× ×××× ××× ××× ××× ×× ×\7.9\7.9
14@NetHome 8600〜860340,000 ×× ×××× ××× ××× ××× ×× ××
15ZTV 7000〜700120,000 ×× ×××× ××× ××× ××× ×× ×××
16C&W IDC 6100〜610120,000 ×\8.4 ×××× ××× ×\8.4\8.4 ××× ×× ××\11.3
17メディア 8880〜888670,000 ×× ×××× ××× ××× ×××× × ×××
18アルファー 7700〜770010,000 ×× ×××× ××× ××× ×××× × ×××
0AB〜J番号 *2
19USEN ×× ×××× ××× ××× ×××× ×× ××
20ケイ・オプティコム \8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4 \8.4\8.4\8.4 \8.4××× ×× ××
21NTT東西 *3 \11.3\11.3 \11.3\11.3\11.0
\11.3
\11.0
\11.3
\11.0
\11.3
\11.3\11.0
\11.3
\11.3\11.0\11.0 \11.3\11.3×\11.3 ×× ××\8.4
凡例
相互接続可(通話料無料)
\9.9相互接続可(通話料有料。表中の数値は3分間での税込通話料で小数点第2位以下は四捨五入)
相互接続予定(通話料無料)
相互接続予定(通話料有料)
×相互接続不可
備考
*1 総務省が配布したIP電話番号「050−CDEF-GHJK」のうちの、「CDEF」の4桁の番号。 (2004年10月05日時点
ただし相互接続を行う際には、この番号のうちの一部としか通話できない場合がある。
*2 「050」番号ではなく、NTT加入電話と同じ「0AB〜J」番号形式のため、配布番号は無し。
発信側が「0AB〜J」番号の情報はアナウンスされているが、着信側が「0AB〜J」番号の場合の接続先および料金は不明。
ただし、ソフトバンクBB発信の場合、「OAB〜J番号のため通常のNTT加入電話と同じ料金」となっているので、他の事業者発信の場合もNTT加入電話と同料金の可能性が高い。
KDDIの光プラスは、KDDIの「050」番の相互接続先と同一なのでここでは省略。
*3 通話料金が上下に分かれているものは、上段が着信側の事業者と同じエリア内からの発信の場合で、下段がエリア外からの発信の場合。


通話可能な「050」番のIP電話番号数の多いVoIP基盤事業者

無料通話できる相手が多いのはどの事業者のIP電話かを、表2を元にまとめたのを表3に記します。 本来ならIP電話に加入している会員数で比較すべきなのですが、そのIP電話の会員数を発表している事業者はほとんどありません。したがってここでは、総務省から配布されているIP電話番号の配布数で比較しています。

表3. 通話可能なIP電話番号数の多いVoIP基盤事業者

順位VoIP基盤事業者 無料通話できる
IP電話番号数
通話可能な
IP電話番号数
1ソフトバンクBB 8,130,0008,130,000
2NTT-Com 4,210,0009,000,000
3パワードコム 3,760,0009,250,000
4ケイ・オプティコム 3,410,0004,690,000
5STNet 3,380,0003,380,000
6KDDI 3,120,0009,160,000
7日本テレコム 3,170,0009,080,000
8NTT-ME 1,280,0009,250,000
ぷらら 1,280,0009,250,000
10フュージョン 660,0009,140,000
11QTNet 390,0002,020,000
CTC 390,0001,670,000
TOHKnet 390,0001,670,000
以下、省略

無料通話できるIP電話番号の数ではソフトバンクBBが圧倒的です。ソフトバンクBBはどの事業者とも相互接続していないのですが、BBフォンだけで他を圧倒しています。他社ではIP電話がオプションサービスなのが多いのに対し、Yahoo BB の標準サービスとして最初から導入されていたのが、かなり大きいですね。

一方、有料通話も含めた通話可能なIP電話番号の数では、ソフトバンクBB以外の相互接続が進みつつあり、その数はソフトバンクBBに拮抗できる勢力になっています。ただ有料ではIP電話のメリットがあまりありませんので、これらが有料でなく無料で相互接続できるようになって初めてソフトバンクBBに対抗できるといえるのでは無いでしょうか。

しかしNTT-COMは無料でのIP電話の相互接続をする気は全くないようで、全てPSTN(NTT加入回線網)経由での有料接続です。自社内にお金を落とすためでしょうが、このままではソフトバンクBBの一人勝ちになってしまいます。そうするとIP電話間の通話がソフトバンクBB内で閉じてしまい、やっぱりNTTにはお金が落ちなくなります。結局、目先の利益にこだわって全てを失うことにもなりかねません。また一社による独占体制は消費者にとっても利益にはなりません。したがって、NTT-COMは中長期的な視野にたって、他事業者との無料でのIP電話の相互接続を行い、ぜひソフトバンクBBに対抗して欲しいものです。