レイジがミハエルと距離を置いてキャノンを構えた。
キャノンは鎧と同じ赤い装甲が装着され、そこからコードが何本も出ている。
「二人とも、さがれ!!」
「あいよ」
レオンとマリがレイジの後方へ下がる。
それを確認して、レイジが発射体勢に移る。
「吹き飛べ!!」
「まずい!クラウド、避けろ!!」
ミハエルが叫ぶ。
だが、クラウドはそれを聞いて敢えて動かなかった。
「何やってるの、クラウド!!」
アイナも必死に呼びかけた。
「これが本物なら」
次の瞬間、レイジのキャノンからいつもの数倍の威力はあろう粒子砲が放たれた。
「あのガキ、避けねぇつもりか?」
レオンが唖然として見ている。
「見せてみろ、力を!!」
クラウドは眼帯を外す。
その直後、粒子砲がクラウドの全身を包んでいった。
ミハエルとアイナが絶句する。
レイジは不敵に微笑んだ。
しかし、その表情は一変してしまう。
射程範囲にあったものは全て吹き飛んでいる、にも関わらず、そこにはクラウドの姿があった。
「あれは・・・」
レオンは気付いた。
「あいつ、DSバリア持ってやがる」
「えっ?」「なに!?」
マリとレイジが思わず聞き返した。
「これで対等に渡り合えるな。無能がぁぁ!!!」
クラウドは叫びながらレオンに向かって突っ込んで行った。
レオンは振り下ろされた剣を受け流す。
「こいつは・・・っ」
レオンは距離を置くため森の中に駆けて行った。
それをクラウドが追って行った。
「マリ、これはちょっとマズい状況だな」
レイジが片膝を地面についた。
「諸刃の剣ね、それ」
マリがレイジに防御魔法をかけて守る。
「アイナ、あそこの二人を殺れ。俺はクラウドを追う」
「わかった」
二人は分散し、アイナがマリとレイジに襲いかかった。
「使えないサイボーグはここで!」
「させない!」
マリが炎で壁を作った。
「チッ」
アイナは二人に近寄れなくなる。
「今のうちに」
マリはレイジを担いでレオンを追おうとした。
「まだ逃げる気か!!」
クラウドがレオンを煽る。
するとレオンは逃げるのをやめ、クラウドの方へ向きなおした。
「俺が何も考えずに逃げると思ったか?」
「あ?」
「そのDSバリア、どこで手に入れた」
「答える筋合いはない!!」
クラウドは痺れを切らし、レオンに斬りかかる。
その時、クラウドの足に何かが引っ掛かった。
次の瞬間、彼の八方から無人機銃の集中砲火が開始された。
「ブービートラップ。・・・やはりあの時殺しておくべきだったか」
クラウドは一発も銃弾を浴びることもなく、バリアに守られて平然と立っている。
「でもな」
クラウドの後ろで何かが倒れる音がした。
彼は嫌な予感がして振り返る。
そこには後方からの銃撃に遭ったミハエルの姿があった。
「あっ・・・あぁ・・・」
「お前のミスだ、ガキ」
レオンはミハエルの姿を見て顔をしかめた。
「(あの状況で全ての被弾箇所が急所を外している?あいつ、避けきれないと判断してわざと・・・。三発しか被弾していないのも奇跡・・・、いや・・・)」
レオンは剣を構える。
「最後はお前だ」
「貴様はああああ!!!!」
クラウドは怒りに任せてレオンに向かって行った。
「ぐぅっ・・・」
以前の何倍も強くなっているクラウドに多少焦りを見せながらも、レオンは攻撃を切り払っていく。
「本気を出さないとヤバいか」
レオンは得意の瞬発力を活かした移動でクラウドの後方へ回る。
「終わりだ!」
剣を振り下ろした瞬間、クラウドの姿は目の前からなくなっていた。
「遅い」
「なっ!?」
いつの間にかクラウドはレオンの後方にいた。
スピードでレオンは負けたことがなかった。
自信があっただけに、驚きは隠せない。
「とどめ!!」
クラウドがレオンの背中から剣を突き刺す。
しかし、ベテルギウスの装甲を貫けなかった。
その時、大きな爆発音と共にスピーカー音のような声が聞こえてきた。
「ワルキュリア隊はこの山を離脱した。残念だったな、レオン・クライン」
その声は忘れもしない、ミリアルド・ハーネスのものだった。
「ハーネス!!」
どこからしているのか分らない声に向けて叫ぶ。
「君たちは、ここで死ね」
次の瞬間、二度目の爆発が起こった。
「クラウド・・・」
ミハエルが吐血をしながらクラウドを呼んだ。
「地崩れが起きる。逃げるぞ」
「なに!?俺たちも巻き込むつもりなのか!!」
クラウドはミリアルドに疑念を持ったが、今は彼を連れて逃げることが優先と判断した。
「逃がすかよ」
レオンがクラウドに斬りかかる。
クラウドはなんとか回避し、ミハエルを安全な場所へ移動させた。
「レオーン!!」
マリの声が聞こえる。
また、次は地面の下から爆発が起こり、地崩れが起こる。
「キャッ!」
「アイナ!!」
崩れた地面と共に落ちていくアイナ。
が、寸前のところでミハエルが腕をつかんだ。
「足を・・・、引っ張るな・・・」
「ごめん・・・」
「だが・・・、今引っ張っているのは腕だな・・・」
そう言ってミハエルは微笑み、アイナを引き上げた。
「ありがとう。でもさっきのは寒すぎだよ」
アイナがミハエルにそう言って微笑んだ。
「クラウドは!」
彼らの視線の向こうで、クラウドはレオンと闘っていた。
激しすぎて速すぎる二人の闘いに目がついていかなかった。
「あいつは来る。先にトラックを追うぞ」
「えっ・・・、うん」
ミハエルとアイナはクラウドを信じ、安全確保とトラックを追うことにした。
レイジはクラウドを狙って撃とうとする。
しかし、標的の動きが速すぎて照準が合わない。
「なんだってんだよ、あいつ!!」
「魔法で足止めしたいけど、こっちも狙いが合わない」
マリも狙うに狙えない状況だった。
下手に攻撃すると、レオンの邪魔になりかねない。
そうしているうちに再び爆発が起こり、マリとレイジのいた足場が崩れ始める。
「マズい!」
「レオン!!」
二人はどうすることも出来ず、下山方向に回避する。
そのうちレオンたちの姿は見えなくなった。
「マリ、一度下山しろ。捜索部隊を呼ぶんだ」
「えっ、なんで?」
レイジが一瞬うつむいて言った。
「あのガキが負けるにしろ、レオンが負けるにしろ、どの道この場は爆発の関係調査しなければならない」
「・・・うん、わかった」
マリは、「縁起でもないことを」と内心思ったが、彼女の中にその想像がないと言えばウソだった。
二人にはかろうじて見えていたのだ。
クラウドという少年に押され、傷だらけのベテルギウスとレオンの姿を。
「そろそろ死ねよ!!」
「黙れ!!」
レオンが剣を突く。
しかし、それはクラウドのバリアで防がれる。
それを振り払い、クラウドがレオンを剣で斬りつけた。
レオンはDSバリアで防御する。
だが、なぜかそれが無効化されてしまう。
「何故なんだ!!」
攻撃をベテルギウスで受ける。
次の瞬間、地下の爆発が連続して起こった。
地面が激しく揺れ、レオンの背後の地面が崩れ落ちた。
クラウドはそれを見逃さなかった。
「落ちろぉぉぉ!!!」
レオンに思い切り突進し、剣を突き刺した。
レオンは後ろによろめく。
クラウドはすかさず剣で炎術を使った。
「炎龍!!」
その爆発的威力でレオンは空中へ放り出された。
「がっ・・・」
空中で身動きが取れなくなったレオンは、崖の上にいるクラウドのことを見た。
その少年の顔は、目つきが鋭く悪魔のような冷たい表情をしていた。
そしてその姿は次に起こった爆発の中に消えていった。
「(終わりか・・・。リカード、トール・・・マリア・・・)」
レオンは真っ逆さまに崖の下へと落ちて行った。
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