蓄膿症とは~鼻炎との関係


鼻の奥を痛めて鼻水や鼻づまりになってしまう、いわゆる鼻かぜ(急性鼻炎)は、季節の変わり目に風邪の初期症状としてもよく起きることです。急性鼻炎の原因で最も多いのが、ウイルスの気道感染による炎症です。


ウィルス性の急性鼻炎にとどまるものであれば、ふつうは暖かく安静にしていることでやがて症状も治まってくるので、特段の鼻の治療も必要ありません。


しかし最近は、さまざまなアレルギー物質を原因として引き起こされる「アレルギー性鼻炎」を患う人が増えてきており、それによって引き起こされる「蓄膿症(ちくのうしょう)」を併発する人が増えています。蓄膿症の発症者数は、年間約30万人とも言われます。

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アレルギー性鼻炎と蓄膿症(慢性副鼻腔炎)は「症状こそ似ているものの、治療法ははっきり異なる」ため、まずは病院で診察を受け、その区別をつけることが大事です。

「レントゲン写真」および「内視鏡による鼻内の観察」によって、どちらなのかを専門医が確定的に診断します。


蓄膿症は正式には、「慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)」と呼ばれます。


「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」とは、鼻の入り口からのどの手前までの部分を指す「鼻腔」とつながっている「副鼻腔」というところが、さまざまな原因によって炎症を起こすものです。


この副鼻腔は、鼻からのどにかけての加湿や加温を調整する役割を果たしている部分ですが、ここは鼻腔を通じて外とつながっていて細菌やウィルスなどが入り込みやすいため、炎症が起きるのです。

炎症が長く続くだけでなく、「鼻水の粘り気が強い」「鼻水の量が多い」場合は、まずは蓄膿症(慢性副鼻腔炎)を疑ってみましょう。


かぜなどで一時的にこの副鼻腔に炎症が起きた状態は「急性副鼻腔炎」、そして炎症が続いて膿がたまってきた状態が「慢性副鼻腔炎」ですが、膿が蓄積してくることから一般に「蓄膿症」と呼ばれているわけです。


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アレルギー性鼻炎が、今日的な蓄膿症の原因


「蓄膿症」は、鼻水(色が黄色・緑がかっていることが多い)や鼻づまり、またにおいが感じられなくなったり、頭重感・頭痛がすることなどが、代表的な症状です。派生的症状として、頭重や頭痛・気管支炎等が起こることもあります。

症状の出かたや重さは、蓄膿症を招いた原因によっても差があるといわれます。


蓄膿症 アレルギー性鼻炎


蓄膿症の発生原因は遺伝や扁桃炎・急性鼻炎の重症化など様々ですが、かつては栄養状態が悪く免疫機能が弱まっていたことをきっかけとして、蓄膿症となるケースも多くありました。

しかし(昔は多かった鼻をたらしている子どもを、最近ほとんど見かけないことからもおわかりのように)、いまでは栄養状態や衛生面の向上により、このような原因による蓄膿症はずいぶんと少なくなりました。


今日、代わって問題になってきているのが、「アレルギー性鼻炎をきっかけとして起こる蓄膿症」です。


アレルギー性鼻炎は、花粉症のようにある時期だけ症状が見られる「季節性」のものと、ハウスダストなどによって年中発症し得る「通年性」のものがあります。

春先に多い「花粉症」は、花粉を「アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす「抗原」)」とするものですね(ちなみに花粉は国内だけでも60種類以上あり、それだけアレルゲンが多岐に渡るわけです)。


アレルギー性鼻炎の原因は十分に解明されていないものの、親からの体質的遺伝もその一因と見られています(ただし、遺伝しても発症しないこともあります)。


いずれにせよ蓄膿症はアレルギーと密接な関係があり、自分では花粉症やアトピーだと思っていたが病院で検査を受けてみたら蓄膿症だったというケースも珍しくないため、まずは病院で診察を受けてみる必要があります。


体質に関わる以上その完治こそ難しいものの、治療によって日常生活面でほぼ問題が出ない程度に症状を和らげることは可能です。

ただし蓄膿症の治療は一般に長期間を要しがちなため、医師の適切な指示のもと根気よく治療に取り組むことが大切です。

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アレルギー性鼻炎は、原因となるスギ花粉やハウスダストなどのアレルギー物質が身の回りから消えて無くならない限り、収まることはありません。


やたらとクシャミが出ることから自分では花粉症かと思っていても、結果的にスギ花粉とは異なったアレルゲンに因ることもあるため、治療の前提としてまずは「アレルゲンの特定」がポイントになります。

そのため医療機関においては、アレルゲンによる皮膚の変化を見るための「皮膚テスト」や、血液採取による「igE(免疫グロブリン)抗体の測定」などが行われます。


この結果、原因となる抗原が特定できない場合は、症状が似ているもののアレルギー性鼻炎とは異なる「血管運動性鼻炎(鼻過敏症の一種)」と考えられます。これは中年以降の女性が特にかかりやすい病気と言われます。


アレルギー性鼻炎で起きた炎症が繰り返されると、鼻粘膜が傷つき腫れた状態が長く続くため副鼻腔炎を発症し、ウィルスや細菌が鼻の内部にさらにこもりやすくなってきます。

これによって副鼻腔炎が慢性化し、蓄膿症になるのです。


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したがって蓄膿症の予防のため、「アレルギー性鼻炎を含めた鼻の炎症を慢性化・重症化させないこと」が大切です。


具体的な予防策としては、

  • 自分の家の室内環境を掃除によって清潔に保ち、カビやダニの繁殖を防ぐこと。
  • 室内の乾燥は鼻の粘膜を刺激するため、加湿器などを使い一定の湿度を保つようにすること。
  • たばこや殺虫剤・線香の煙や排気ガスなど鼻粘膜を刺激する日常生活上のアレルゲンを、できるだけ回避すること。
  • 過労によるストレスや体調不良などを招かぬよう、規律ある生活によって身体に抵抗力をつけるようにすること。

  • などが挙げられます。


    なお「喘息(気管支喘息)」や「アトピー性皮膚炎」もアレルギーによる症状ですが、アレルギー性鼻炎だけにとどまらずこれらの症状を合併しているケースも、珍しくありません。

    「気管支喘息のおよそ8割はアレルギー性鼻炎を合併する」とも言われています。


    鼻は気道を通じて気管支(肺)とつながっているので、喘息の治療によって肺の機能が改善し、アレルギー性鼻炎の症状も良くなる可能性があります。

    逆に言えばアレルギー性鼻炎を治療せず放置していると、悪化して喘息を合併する可能性も高まるので注意が必要です。

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    アレルギー性鼻炎の薬物治療では、経口薬や点鼻薬が使用されます。

    1種類の薬で症状が抑えられない時などに、別の薬を組み合わせて使うこともあります。


    代表的な経口薬として、神経を刺激するヒスタミンの受容体をブロックする「抗ヒスタミン薬」、アレルギーを抑制し炎症を抑える効果の高い「ステロイド薬」などがあります(ステロイドには、点鼻薬や注射療法もあります)。


    その他、注射して体内に別種の抗体を作りながら、アレルギーを起こす抗体と抗原が結びつかないように体質を変えていく「減感作療法」もありますが、これは治療が2年前後と長くかかること・対象となるアレルゲンが少ないこと・有効率が5~7割程度であり副作用もあること、などのデメリットがあります。


    なおアレルギー性鼻炎の症状を和らげてくれる、保険適用の「漢方薬」もあります。

    鼻水やクシャミ等症状の出始めに飲むとよいとされるのが「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」です。

    ただし成分にエフェドリンが含まれるため、胃弱・不眠の既往症がある方は避けたほうがよいでしょう。エフェドリンの含まれない「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」などもあります。


    上記のいずれの薬剤もその症状によって使い分けられることはもちろんですが、病状によって薬の使用が禁忌となっていたり、また妊娠中などの服用によって副作用を招く可能性もあるので、専門医の指示によく従う必要があります。


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    蓄膿症の治療~市販薬・投薬・手術など



    市販の鼻炎薬は錠剤などの「内服薬タイプ」と鼻にさす「点鼻薬タイプ」に大別されますが、いずれのタイプも症状を一時的に緩和させる効果に留まります。


    市販薬を自己判断で長期間使い続けるのは、避けたいところです。

    たとえば市販の点鼻薬は、初期段階で効果的なケースもあるものの、ひんぱんに使っていると「点鼻性鼻炎」という別の病気を引き起こすケースもあります。点鼻性鼻炎が蓄膿症につながってしまうこともあります。


    市販薬は、ステロイドや抗ヒスタミンがある程度含まれる点は病院の医薬品と同様ですが、医師の判断無しでは、「長期使用からくる副作用」や「禁忌症状へのステロイド過剰投与」などのリスクを排除できません。

    市販薬はあくまで症状の一時的な緩和のために使い、症状が初期の段階で、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。


    蓄膿症では、通常は3ヶ月~半年程度の投薬による治療が行われます。

    現在の蓄膿症の治療においては、「マクロライド系」と呼ばれる細菌の増殖を長期的に抑える抗生物質を服用することにより、8割方は手術無しの通院治療で対応できるようになっています。

    しかしマクロライド系抗生物質が有効でなかったり、大きな鼻ポリーブ(鼻茸)があって副鼻腔がふさがれているような場合は、手術治療も検討されることになります。


    手術となった場合、「鼻の内部を部分的に直接切除」「レーザーなどによって、鼻粘膜の表面を処理」という2つのアプローチがあります。

    最近は鼻の穴から内視鏡を入れモニターをみながらレーザーや超音波によって行う「内視鏡手術」が、術後の回復も早く手術時間も短いということで注目されているようです。


    これは身体への負担も少なく最長2~3日程度で終了する手術のため、過度に心配する必要はありません。

    ただし内視鏡手術は、現時点でどの耳鼻咽喉科でも行われているわけではなく、また施術者の力量によるところも大きいとされますので、事前にネットや専門書籍で内視鏡手術の件数や実績を調べてから、受診したほうがよいでしょう。


    いずれにせよ、専門医の治療により蓄膿症の大部分は治るとされていますので、「蓄膿症は、耳鼻咽喉科の診察による早期対応が肝心」であることを、ぜひおぼえておきたいものです。

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