骨粗鬆症とは、その真の恐ろしさ

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」は、骨からカルシウムが抜け、骨が全体にスカスカになってしまうことにより、大きな負荷をかけていないのに骨折しやすくなる症状を指します。

高齢化社会が進む日本において、骨粗鬆症の推定患者数は女性800万人・男性200万人の、合計1,000万人強に達するとされます(骨粗鬆症の患者数(骨粗鬆症財団))。

とりわけ女性は、男性に比べてそもそも骨量も少ない上に、閉経後にホルモンのバランスが崩れ骨粗鬆症になる割合が高く、患者全体の8割を占めます。70歳以上の女性の打腰椎や大腿部骨折の発生頻度は、男性の2倍以上です。年齢で見ると、80歳代における有病率が20%以上です。

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成人の骨は、古くなった骨が血液に吸収される「骨吸収」と、新しい骨ができる「骨形成」による新陳代謝を繰り返しながら、1年で全体の2~3割が入れ替わっていきます。

高齢になるにつれこの二つのバランスが崩れ、骨形成のスピードが落ちると同時に、骨の破壊が進んだときに骨折しやすくなるわけです。

骨粗鬆症の恐ろしいところは、これから高齢者がますます人口構成の中核を占めていく中で、骨折や疼痛(とうつう)による歩行障害のため、外出を含め自立した生活を送ることに危険と不安を感じてしまうことです。

そうなると買い物や娯楽を求めての外出をだんだんと控えるようになり、家に引きこもったりあるいは寝たきりの生活になってしまい、そのまま介護を必要とする生活に移行する可能性が高まります。

一般に骨粗鬆症で転倒骨折しやすい部位は、股関節・手首・背骨・肩などです。

骨折は痛みのみならず、出血を伴います。1本の肋骨骨折で約100ml、大腿部骨折で300~1,000ml程度の出血をきたすため、皮下出血のみならず内臓損傷につながることもあります。

なかでも一年でおよそ10万人の症例がある「大腿骨(足の付け根)付近の骨折」は、大きな問題です。ここを骨折するということは、すなわち歩けなくなって寝たきりになり車椅子生活を余儀なくされるということなのです。

手術は可能ですが歩行がきわめて不自由となったり、また反対側の足の大腿骨に負担がかかって、そちらを骨折してしまう可能性もあります。

また骨粗鬆症によって呼吸機能や消化機能に間接的な悪影響が及び、健康を害して生きる気力を急速に失う方も、少なくありません。

これらは本人の生きがいを挫き、その生活の質を大きく下げます。のみならず、日本でそのような高齢者がじわじわと増えることにより、最終的には社会的・国家経済的に大きな損失につながることになります。これが骨粗鬆症という病気がもたらす、本当の恐ろしさといえるかもしれません。

よって骨粗鬆症になってから治療に励むよりも、そうならぬよう日頃から骨粗鬆症の予防に努めることが大切です。

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骨粗鬆症の検査について

骨粗鬆症は「原発性骨粗鬆症」と「続発性骨粗鬆症」の、大きく二種類にわけられます。

原発性骨粗鬆症」はその原因が不明とされ、さらに細かく閉経性・老人性・突発性に分けられています。症例としてもっとも多いのは、上で述べた女性の閉経性骨粗鬆症と、高齢者の老人性骨粗鬆症です。

原因が不明とはいっても、特に中年期をすぎてから骨量が減少していくことに加え、喫煙・飲酒・ビタミンやカルシウムの不足・運動不足など生活上の様々なマイナス要因が、複合的に骨密度を下げる方向に作用していることはまず疑いの無いところです。

最大骨量は20~30代の時期に完成することから、成長期にカルシウムの摂取が不足している場合には、将来に骨量減少の影響が大きく現れることになります。これらを逆から考え、そういったマイナス要因をなくしていくことも、骨粗鬆症の予防につながります。

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続発性骨粗鬆症」は、胃の切除やステロイド剤服用の副作用など、その原因を特定できるものです。これも同様に、内分泌性・栄養性・薬物性・先天性等、細かくわけられます。

ステロイド剤などの骨粗鬆症を促す作用のある薬を長期間服用した人や、甲状腺機能亢進症などの病気を持った人は、骨粗鬆症にかかりやすくなる傾向があります。

また血縁者に骨粗鬆症の方がいる場合も、統計的に骨粗鬆症になりやすい傾向があると言われます。家族に骨折歴がある女性なら、40代後半に骨粗鬆症の検査を受けても早すぎるということはありません。

骨粗鬆症の検査は、大きく「X線検査」と「骨密度検査」の二つで行われます。

X線検査」では背骨の撮影を行い、「圧迫骨折の有無」を確認します。ここで圧迫骨折が判明すると、それだけで骨粗鬆症と診断されます。ちなみに骨粗鬆症においてもっとも起こりやすいのが、この「背骨の圧迫骨折」です。

腰を大きく曲げ歩く老齢の女性の姿を、皆さんもよく街で見かけることでしょう。身長が縮んだ高齢者の多くが、背骨(椎体、ついたい)の圧迫骨折を原因としています。

骨粗鬆症が著しく進むと風邪で咳き込んだり、尻もちをついた瞬間等、比較的軽い力が加わっただけで発症することもあります。

圧迫骨折は痛みがほとんど無いために気づくのが遅れがちなだけでなく、内臓機能の低下と神経の圧迫が気づかないうちに進むのも、恐いところです。

関連して、骨粗鬆症かどうかの簡単な自己診断方法として、壁にかかとをつけて立って後頭部が壁につくかをチェックしてみましょう。つかない場合は姿勢がゆがんでおり、骨粗鬆症の可能性も高いといえます。

一方で骨密度検査は、測定位置や方法・測定機器によってその基準値が異なりますが、一般には腰椎(ようつい)や踵(かかと)の骨密度を測り、基準値を下回った場合に骨粗鬆症と診断されます。

骨密度測定値は、若年成人平均値(20~44歳)の80%未満で「骨粗鬆症の疑いあり」とされ、70%未満になると薬物治療が開始されます。脊椎が変形しているなどの理由により腰椎の診断が難しい場合は、他の部位で骨密度を測ります。

骨密度検査の代表的診断方法のひとつに、「骨代謝マーカー検査」があります。

骨代謝マーカー検査」は血液検査や尿検査によって、骨の形成・吸収にかかわる代謝のバランスを調べるもので、これは保険の効く治療です。

ただし骨代謝マーカー検査は、現在の骨密度が今後減っていくかどうかという「変化の傾向」をはかるもので、「骨そのものの強さ」を直接測ることはできません

骨の強さ(骨密度)をより直接的に測る方法としては、現在DXA法(デキサ法、二重エネルギーX線吸収測定法)・MD法、超音波診断の3つが一般的となっています。最初の2つはX線を使っており、超音波診断に比べて測定精度も高くなります。

現状でDXA法が、精度も高く検査方法としてベストとされていますが、装置が大学病院や大手医療機関にしか普及していないので、どこの病院でも行えるわけではないことに注意が必要です。

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近年、骨粗鬆症においては「骨密度」に加え「骨の質」も重要であるという考え方が主流になっています。骨の質は、骨代謝のバランスや石灰化の程度などにより評価されます。

したがって、骨密度の全体像をもっとも的確に把握するには、骨代謝マーカー検査と骨密度測定を組み合わせて行なうのが最適とされます。

「骨密度」と「骨の質」の双方をチェックするためにも、男性は70歳頃・女性は50歳半ばを過ぎた頃から、骨代謝マーカー検査を年に一度は受けるようにしたいものです。

とりわけ女性は閉経後に女性ホルモン「エストロゲン」が欠乏し、かなり早い段階から骨密度の減少が進むため、たとえ現在の骨密度が保たれていても油断はできません。女性はまず閉経時に検査を受け、その後は2年おきに検査を受けるとよいでしょう。

骨粗鬆症の治療と予防

骨粗鬆症の治療は、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つを基本として行われます。

特に「薬物療法」においては、性別・患者の状態・治療目的などに応じ、骨密度を高めるための骨吸収抑制剤骨形成促進剤のほか、ビタミン製剤カルシウム製剤など色々なタイプの薬が使用されています。

一般に骨粗鬆症の投薬治療は、効果を判断するのに6ヶ月~1年程度の時間がかかります。

薬の服用はおよそ1年以上続ける必要があるため、根気強い治療を覚悟しておかなくてはなりません。

現在は「ビスフォスフォネート」などの薬が、骨量を増やすのに有効とされています。ただしビスフォスフォネート系の薬は吸収率がとても低いため、起床後空腹時に水で服用するという服用方法を厳格に守る必要があります。

SERM(サーム、選択的エストロゲン受容体作動薬)」は閉経後早期の女性に対して投与される薬で、骨折の予防効果と骨密度の増加効果に優れるとされます。

さらに骨量がそれほど減少していない人に投与される「活性型ビタミンD3薬」や、骨質の悪化やビタミンK不足を補う「ビタミンK2薬」などの薬もあります。

2010年に認可された新薬「テリパラチド」は、骨芽細胞の働きを促し、骨量と骨密度を増やす薬です。ただしテリパラチドは骨粗鬆症が重い人や骨折リスクの高い人が投与対象となり、使用期間も最長2年と定められています。

薬によっては副作用の心配もあるため、医師の処方に従って服用間隔をきちんと守ることが大事です。

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まだ骨粗鬆症になっていない人の予防という観点では、「食事」と「運動」の2つが重要になります。

日本人の一日のカルシウム所要量は600㎎とされますが、全体に不足気味と言われています。とりわけ高齢者は、一日800㎎程度のカルシウム摂取でようやく所要量に達するとされています。

日頃からカルシウム(乳製品・大豆製品・小魚類等)の多い食品、そしてその吸収をよくするビタミンDの多い食品(さけ・さば・まぐろ・いわし・生しいたけ等)の摂取が必要となります。

カルシウムを骨に定着させるはたらきのあるビタミンK2を非常に多く含む納豆も骨粗鬆症の予防によい食品なので、積極的に摂りたいものです。ビタミンKは250~300mg・ビタミンDは10~20ug程度が、1日摂取量の目安です。

最近の研究では、カルシウム不足によって骨から溶け出したカルシウムが動脈壁に染み込んで進行する「動脈硬化」も、骨粗鬆症と密接な関係があるらしいことが指摘されています。十分なカルシウム摂取は、骨粗鬆症のみならず、動脈硬化の予防も兼ねるわけですね。

なおカルシウムは単独で食べても、ほとんど体内に吸収されません。ビタミンDの働きが必要なので、両方バランスよくとるよう努めましょう。

ちなみに骨粗鬆症こわさのあまり、カルシウムだけを急ピッチで摂りすぎると、「高カルシウム血症」という病気になったり、腎臓に石ができたりすることもあるので注意が必要です(とりわけ医師の処方による骨粗鬆症の内服薬を飲んでいるのに、さらに市販のカルシウムサプリを摂っている方などが「高カルシウム血症」になりやすいと言われます)。

カップラーメンなどのインスタント食品に頼る一人暮らしの高齢者なども多いようですが、一般にインスタント食品にはカルシウムの排泄を促す「リン」が多く含まれています。

インスタント食品の食べすぎは骨量の減少につながるので、控えるようにしたいものです。

運動療法による予防は、「屋外での歩行」が特に高齢者に勧められます。

外で日光にあたることで、骨折に予防効果のあるとされるビタミンDの体内合成にもつながります。ウォーキングと大きく構えずとも、買い物や散歩など日常生活における歩行の機会を、こまめに確保することが大切です。

日常的な運動を心がけるだけで、骨折リスクは20~50%下がるとも言われます。

また家の中でつまずいたり転倒したりしないよう、家具などの障害物を生活導線上に置かないよう、自宅の環境を整えることも大切です。

夜でも室内を見渡せるよう照明を明るいものに替えたり、靴や室内スリッパのサイズをちゃんと合わせるなど、細かな配慮も必要になります。

ちなみに高齢者のみならず、若い女性などがダイエットによる極端な食事制限・偏食を続けていると、ホルモンバランスの変調による生理不順・栄養不足による骨量の減少によって、若くして骨粗鬆症となる可能性もあります。

目先の体重減少を優先した無理なダイエットは、将来的な骨粗鬆症の発症リスクを大きく高めることに注意すべきです。

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